日本の家紋ロゴはこうデザインされた 8種類の家紋を分析
日本の家紋ロゴはこうデザインされた 8種類の家紋を分析
家紋は日本において代々引き継がれてきた紋章であり、 その家の生業や出身地などをモチーフとして形作られてきました。 そうした意味では日本人にとってもっとも身近な「ロゴ」と言えます。 今回はそんな家紋がどのようにデザインされたのか紹介していきます。
家紋は日本において代々引き継がれてきた紋章であり、 その家の生業や出身地などをモチーフとして形作られてきました。 そうした意味では日本人にとってもっとも身近な「ロゴ」と言えます。 今回はそんな家紋がどのようにデザインされたのか紹介していきます。
Logo/CI
目次
帰省してお墓参りに行ったときや、結婚式の着物などで目にする機会のある家紋。
家紋は日本において代々引き継がれてきた紋章であり、その家の生業や出身地などをモチーフとして形作られてきました。
そうした意味では日本人にとってもっとも身近な「ロゴ」と言えます。
今回はそんな家紋がどのようにデザインされたのか紹介していきます。
古くからの知恵によってデザインされた家紋の成り立ちを知ることで、ロゴデザインスキルを磨くことができそうです。
そもそも家紋とは
家紋は900年ほど前の平安後期に発生したと考えられており、もともと公家が家のしるしとして使い始めたのがはじまりであると考えられています。
その後武士の時代である鎌倉時代になると、敵味方の区別をつけるために実用的な家紋が考案されるようになり、近世になると徐々に庶民にも伝わるようになっていきました。
現在では家紋の種類はおよそ2万種類にも及ぶと考えられています。
西洋でも同じように家のしるしとして紋章が用いられますが、王族や貴族などに限られていることがほとんどです。
そのため日本のように天皇から庶民に至るまで用いられている家紋は、世界でも珍しい文化なのです。
家紋のデザインと具体例
家紋には「割り出し法」という作図方法が用いられており、正円を三つ割、五つ割などにわけて、その上にモチーフを配置することでバランスの取れた表現が生み出されています。
この方法は現在のロゴデザインにも通じ、それはコンストラクション・グリッドと呼ばれています。
以下では割り出し法のいくつかの種類を説明し、その割り出し法で描かれた家紋とその由来について詳しく解説していきます。
三つ割
各種の割り方
三つ割は、正円を三等分しでできた三角形の上にモチーフを配置していく作図法です。
割り出し法のなかではもっともシンプルな作図法であり、3つのモチーフを配置する家紋を作図する際に用いられることが多いです。
丸に三つ柏 苗字:小泉氏、花田氏、菊池氏など
丸に三つ柏/maru ni mitsu kashiwa
三つ柏は柏の葉を3つ描いた図案の家紋で、日本においてもっともよく用いられている家紋「十大紋」のひとつに数えられています。
もともと柏の葉は、食べ物を盛る器として神事においても用いられた植物であり、神紋としても広く用いられました。
左三つ巴 苗字:有馬氏、板倉氏、小山氏など
左三つ巴 hidari mitsu tomoe
三つ巴は勾玉のような形を3つ描いた家紋で、日本で広く用いられている家紋の一つです。
弓を射るときに用いる鞆を図案化したという説もありますが、水が渦を巻くさまと解釈されるようになり、平安末期には火災除けのまじないとして用いられることもありました。
5つ割り
五つ割り | itsutsu wari
5つ割りは正円を5等分にすることで、正五角形を作り出す作図法で、この上にモチーフを配置することにより、より複雑な家紋を描くことが可能になります。
特に花を描くのに適しており、梅や桜の家紋を描く際に用いられることが多いようです。
丸に梅の花 苗字:西村氏、松岡氏など
丸に梅の花 | maru ni ume no hana
梅は菅原道真が好んだことで知られた花であり、福岡の太宰府天満宮の紋は「梅花」、また梅の名所として有名な東京の湯島天神では「梅鉢」、京都の北野天満宮では「梅星」がもちいられてきました。
5つ割りを用いることによって、バランスよく梅の花びらが配置されたデザインになっています。
中輪に唐花 苗字:福田氏、小野寺氏など
中輪に唐花 | chuwa ni karahana
唐花は実際に実在する植物の名前ではなく、中国の唐風の植物模様という意味であり、実際に大陸から伝来し、奈良時代には文様として使われるようになったといわれています。
円や五瓜を組み合わせるなど、さまざまなバリエーションが生み出された文様の一つでもあります。
八つ割
八割りは正円を八等分したもので、より表現の幅が広がる製図法です。
4つのモチーフを配置するのに優れており、多くの家紋が八割りを採用しています。
丸に違い鷹の羽 苗字:河合氏、片山氏など
丸に違い鷹の羽 | maru ni chigai taka no ha
鷹の羽は日本中でよく用いられる「十大紋」のひとつであり、鷹の姿ではなく鷹の羽を描くことでより象徴的に鷹のイメージを表現した家紋です。
隅立て四ツ目 苗字:梅川氏、佐々木氏など
隅立て四ツ目 | sumitate yotsume
隅立て四ツ目は染模様の鹿の子絞りの文様を図案化した家紋です。
江戸時代には鹿の子絞りの着物は高級品であったため、その珍重さから家紋に用いられるようになったと考えられています。
十割り
十割り | jyuu wari
十割りは正円を十等分したもので、5つ割りでできた図を応用したものです。
5つ割りよりもより高度な表現が可能になります。
丸に桜 苗字:細川氏、松平氏など
丸に桜 | maru ni sakura
桜は平安時代から文様として用いられるようになっていたものの、家紋になったのはかなり遅く江戸時代ごろであったといわれています。
特に大名が用いたことで知られており、細川氏や松平氏、仙谷氏といった武将たちが有名です。
五つ菱 苗字:明智氏、加藤氏など
五つ菱 | itsutsu bishi
桔梗の花を上から見た図を家紋に取り入れたもので、明智光秀や加藤清正などがこの家紋を用いていたことで有名です。
おわりに
家紋は日本人にとってもっとも身近なロゴシンボルであり、アイデンティティを表す重要なイメージです。そのひとつひとつの由来や成り立ちを学ぶことは、古くから続く日本の伝統とデザインを学ぶことにつながります。
そして三つ割、十割などの手法は現代のロゴ作成にも活かせると思いますので、覚えて置いて損はないと思います。
参考: https://youtu.be/FF234KgPYBw?si=cA9lpZTttPgLuT9N
波戸場 承龍Shoryu Hatoba
この記事は2020年に書かれたものです。
帰省してお墓参りに行ったときや、結婚式の着物などで目にする機会のある家紋。
家紋は日本において代々引き継がれてきた紋章であり、その家の生業や出身地などをモチーフとして形作られてきました。
そうした意味では日本人にとってもっとも身近な「ロゴ」と言えます。
今回はそんな家紋がどのようにデザインされたのか紹介していきます。
古くからの知恵によってデザインされた家紋の成り立ちを知ることで、ロゴデザインスキルを磨くことができそうです。
そもそも家紋とは
家紋は900年ほど前の平安後期に発生したと考えられており、もともと公家が家のしるしとして使い始めたのがはじまりであると考えられています。
その後武士の時代である鎌倉時代になると、敵味方の区別をつけるために実用的な家紋が考案されるようになり、近世になると徐々に庶民にも伝わるようになっていきました。
現在では家紋の種類はおよそ2万種類にも及ぶと考えられています。
西洋でも同じように家のしるしとして紋章が用いられますが、王族や貴族などに限られていることがほとんどです。
そのため日本のように天皇から庶民に至るまで用いられている家紋は、世界でも珍しい文化なのです。
家紋のデザインと具体例
家紋には「割り出し法」という作図方法が用いられており、正円を三つ割、五つ割などにわけて、その上にモチーフを配置することでバランスの取れた表現が生み出されています。
この方法は現在のロゴデザインにも通じ、それはコンストラクション・グリッドと呼ばれています。
以下では割り出し法のいくつかの種類を説明し、その割り出し法で描かれた家紋とその由来について詳しく解説していきます。
三つ割
各種の割り方
三つ割は、正円を三等分しでできた三角形の上にモチーフを配置していく作図法です。
割り出し法のなかではもっともシンプルな作図法であり、3つのモチーフを配置する家紋を作図する際に用いられることが多いです。
丸に三つ柏 苗字:小泉氏、花田氏、菊池氏など
丸に三つ柏/maru ni mitsu kashiwa
三つ柏は柏の葉を3つ描いた図案の家紋で、日本においてもっともよく用いられている家紋「十大紋」のひとつに数えられています。
もともと柏の葉は、食べ物を盛る器として神事においても用いられた植物であり、神紋としても広く用いられました。
左三つ巴 苗字:有馬氏、板倉氏、小山氏など
左三つ巴 hidari mitsu tomoe
三つ巴は勾玉のような形を3つ描いた家紋で、日本で広く用いられている家紋の一つです。
弓を射るときに用いる鞆を図案化したという説もありますが、水が渦を巻くさまと解釈されるようになり、平安末期には火災除けのまじないとして用いられることもありました。
5つ割り
五つ割り | itsutsu wari
5つ割りは正円を5等分にすることで、正五角形を作り出す作図法で、この上にモチーフを配置することにより、より複雑な家紋を描くことが可能になります。
特に花を描くのに適しており、梅や桜の家紋を描く際に用いられることが多いようです。
丸に梅の花 苗字:西村氏、松岡氏など
丸に梅の花 | maru ni ume no hana
梅は菅原道真が好んだことで知られた花であり、福岡の太宰府天満宮の紋は「梅花」、また梅の名所として有名な東京の湯島天神では「梅鉢」、京都の北野天満宮では「梅星」がもちいられてきました。
5つ割りを用いることによって、バランスよく梅の花びらが配置されたデザインになっています。
中輪に唐花 苗字:福田氏、小野寺氏など
中輪に唐花 | chuwa ni karahana
唐花は実際に実在する植物の名前ではなく、中国の唐風の植物模様という意味であり、実際に大陸から伝来し、奈良時代には文様として使われるようになったといわれています。
円や五瓜を組み合わせるなど、さまざまなバリエーションが生み出された文様の一つでもあります。
八つ割
八割りは正円を八等分したもので、より表現の幅が広がる製図法です。
4つのモチーフを配置するのに優れており、多くの家紋が八割りを採用しています。
丸に違い鷹の羽 苗字:河合氏、片山氏など
丸に違い鷹の羽 | maru ni chigai taka no ha
鷹の羽は日本中でよく用いられる「十大紋」のひとつであり、鷹の姿ではなく鷹の羽を描くことでより象徴的に鷹のイメージを表現した家紋です。
隅立て四ツ目 苗字:梅川氏、佐々木氏など
隅立て四ツ目 | sumitate yotsume
隅立て四ツ目は染模様の鹿の子絞りの文様を図案化した家紋です。
江戸時代には鹿の子絞りの着物は高級品であったため、その珍重さから家紋に用いられるようになったと考えられています。
十割り
十割り | jyuu wari
十割りは正円を十等分したもので、5つ割りでできた図を応用したものです。
5つ割りよりもより高度な表現が可能になります。
丸に桜 苗字:細川氏、松平氏など
丸に桜 | maru ni sakura
桜は平安時代から文様として用いられるようになっていたものの、家紋になったのはかなり遅く江戸時代ごろであったといわれています。
特に大名が用いたことで知られており、細川氏や松平氏、仙谷氏といった武将たちが有名です。
五つ菱 苗字:明智氏、加藤氏など
五つ菱 | itsutsu bishi
桔梗の花を上から見た図を家紋に取り入れたもので、明智光秀や加藤清正などがこの家紋を用いていたことで有名です。
おわりに
家紋は日本人にとってもっとも身近なロゴシンボルであり、アイデンティティを表す重要なイメージです。そのひとつひとつの由来や成り立ちを学ぶことは、古くから続く日本の伝統とデザインを学ぶことにつながります。
そして三つ割、十割などの手法は現代のロゴ作成にも活かせると思いますので、覚えて置いて損はないと思います。
参考: https://youtu.be/FF234KgPYBw?si=cA9lpZTttPgLuT9N
波戸場 承龍Shoryu Hatoba
この記事は2020年に書かれたものです。
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